オーナーレポート | Vol.12
いまさら聞けない、敷金ガイドラインの実態と動向。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が国交省より発表されたのが平成10年3月。平成16年には東京都が条例を定めた為、東京ルールとも言われ、地方には関係ないという見解が大勢を占めておりました。しかしながら近年裁判ではこのガイドラインをもとに判決が出ており、実質的には法律に近い拘束力を持ちつつあります。修繕の負担区分についてはガイドラインから外れる主張をしても、争えばオーナー様が敗けます。
本ガイドラインの基本的な考え方は、『原状回復とは賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること』であり、設備に設定された耐用年数に応じて、年数が多いほど借主の負担は減少していきます。
例えば壁紙の場合、耐用年数は6 年と設定されています。3 年居住した後の原状回復の場合、故意に汚れていたとしても、壁紙交換費用の半分(6 分の3)は経年劣化として貸主の負担となります。
※「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より抜粋
上記の法則では、クリーニング代を含め、実質借主に請求できる項目はほとんどありません。また上記ガイドラインを盾にとって「敷金は全額戻ってくる」と消費者を煽る情報もたくさんあり、こういう情報に影響され、義務はないから払わないでいいと勘違いする入居者の方も少ないながら、いらっしゃいます。
数年前より、弊社では敷引きなど退去時の定額清算を推進してきました。現在では法的に返還義務のない礼金を利用し、可能な限り礼金で精算するよう推奨しています。まずはもめる可能性を事前になくすことの方が大切です。
将来的には、一時金はクリーニング代程度などの小定額となり、敷金礼金は0、家賃担保は保証機関に転嫁、経年劣化を含む修繕費用は家賃の一部を積立て、という仕組みになっていくのではないでしょうか。ただ今まで一時金で賄ってきた修繕費用をいきなり家賃に転嫁するのは容易ではありません。少しずつ、市場に合わせて変えていくしかありません。
8月14日、法務大臣の諮問機関である法制審議会は民法の改正審議の中で「敷金」に関するルールを明文化することを検討しており来年の通常国会に民法改正案を提出する予定である、というニュースが流れました。その後新聞にも敷金返還の民法への明文化が報道されています。ガイドラインが法律となる日も近いと思われます。