気になる争点、近年の判決例を振り返る。~NHK受信料の場合~

NHKの受信料は、昔からNHKと視聴者の間で、視てないから払わないという争いが絶えません。NHKの訪問に一度は居留守を決め込んだ経験は多くの方がお持ちだと思いますが、最近の争点は視る視ないではなく、賃貸経営にも影響を及ぼすような判決も出ています。今回はその争点と判決例を集めてみました。

①ホテルのTVの場合 判決及び考察
東京地裁 H29.3.29
NHKがホテルの東横インに全国の客室のテレビ計3万4千台分の受信料を請求
請求をほぼ認め、計約19億3千万円の支払いを命じた。TV設置者である東横インに受信料支払いの義務があるとした。東横インは控訴。
②マンスリーマンションのTV(備付)の場合 判決及び考察
東京地裁 H28.10.27
マンスリーマンション入居者がTVは自分の所有物ではないとして支払った受信料の返還をNHKに請求
部屋にテレビを設置したのは物件のオーナーか運営会社であり、男性には受信料の支払い義務はなかった」として、NHKに1310円の支払いを命じた。
これは備品付で賃貸しているオーナーにとってNHK受信料を賃貸人である設置者が払うということになりかねない驚きの判決でした。
東京高裁 H29.5.31
マンスリーマンション入居者がTVは自分の所有物ではないとして支払った受信料の返還をNHKに請求、1審ではNHK敗訴。
受信料は、NHKが国や広告主の影響を受けず、豊かでかつ良い放送番組を提供するため、国民に直接費用負担を求めるもの。放送法に定義する「設置した者」とは、物理的に設置した者だけでなく、テレビを占有・管理している住人も含まれると判断した。
前記の上級審で設置者負担であることが覆りましたが入居者は最高裁に控訴する為、予断を許しません。また判決でも「テレビを占有・管理している住人」も義務者に含まれるというもので契約書に規定しないと設置者にも負担の義務があるということになります。
③ワンセグ(TVが見れる携帯電話)の場合 判決及び考察
さいたま地裁 H28.8.26
ワンセグ付き携帯電話の所有者がNHKから受信料を要求されるのは不当だとして、受信料契約を結ぶ義務がないことの確認を求めた
放送法64条は「受信設備を設置した者は受信契約をしなければならない」とあるが、同法の別の条文では「設置」と「携帯」の用語を区別して使っており、64条で定める「設置」に、電話の「携帯」は含まれないとNHKの敗訴。NHKは控訴。
ワンセグは賃貸経営には関係ありませんが、争点となる「設置」の解釈についての判決が出ているので参考になると思います。
水戸地裁 H29.5.25
ワンセグ付き携帯電話の所有者がNHKに支払った受信料1310円の返還を求めた
放送法について「受信設備を使用できる状態におくことをいい、『携帯』の概念も包含する」として、「放送受信契約を締結する義務があった」と訴えを退けた。原告は控訴。
前記と地裁レベルでの判断が分かれましたが、「設置」という言葉に拘らないというマンスリーマンションの高裁判断にも通じるところがあり、流れが変わってきているのかもしれません。