平成30年度税制改正の動向

平成30年度税制改正大綱が平成29年12月22日に閣議決定されました。賃貸経営・不動産に関係するものを中心に主要な改正項目をまとめました。今後国会に提出後3月に成立する予定です。

創設された税制
事業承継税制の特例の創設
(平成30年1月から平成39年12月31日までの間に贈与又は相続による取得する財産について適用)
これまでの事業承継税制が強化され、取得した全ての特例認定承継会社の非上場株式に対し、相続税の全額を納税猶予できるようになりました。また雇用確保要件が大幅に緩和され、代表者以外からの承継も対象となるなど、使いやすい制度となっております。減税となります。
なお平成35年3月31日までの間に特例承継計画を都道府県に提出するなど必要な手続きがあります。
相続登記時の登録免許税の免税措置の創設
(平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に被相続人名義に所有権移転登記をする場合)
被相続人が先の相続時に土地の所有権移転登記をしないまま亡くなっている場合、亡くなった被相続人名義に所有権移転登記をする場合の登録免許税が免税になります。相続人名義への所有権移転登記は引き続き課税されますが、全体的には減税となります。
既存制度の変更
個人所得税の控除見直し
(平成32年分以降の所得税、平成33年分の住民税から適用)
基礎控除が10万円増額となります。一方給与所得控除の額が10万円減額され、かつ給与収入850万円超は上限195万円となります。結果的に給与収入850万円以上が増税になります。目安として年収1000万円の場合、所得税住民税合わせて約5万円の増税です。
現行65万円の青色申告特別控除ですが、e-TAXを使わない、又は帳簿を法律に基づいた形式で電子的に保存しない場合は55万円に減額となり、増税となります。
一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し
(原則平成30年4月1日以降に一般財団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用)
特定の一般社団法人等の役員が死亡した場合に、一般社団法人の資産に応じた一定の相続税が、該当の一般社団法人自体に課税されます。また個人から一般社団法人等に財産の贈与等が合った場合の課税要件が明確に規定されることになります。出資金や株式などの持ち分という概念が無い一般社団法人等を利用した相続税対策に対する改正で、増税となります。
相続税での小規模宅地等の特例の見直し
(平成30年4月1日以降の相続から適用)
別居親族が相続する場合、所有物件への居住は本特例の適用外要件ですが、自己と配偶者の所有物件だけでなく、3親等以内の親族又は特定法人が所有する物件に3年以内に居住していること、及び過去に所有していた物件に相続開始時に居住していることが追加され、この場合80%評価減は使えません。また貸付事業用宅地(アパート用地)については相続時3年以内にアパートを建築した場合は適用外となり50%評価減が使えなくなります。いずれも、短期的な相続対策や小手先の相続対策を防止する為の改正で増税となります。