2017年10月に新しい住宅セーフティネット制度が始まりました。住宅の確保に配慮が必要とされる、高齢者、低所得者、子育て世代、障害者、被災者、外国人などに対して民間の賃貸住宅を活用することで、公営住宅に頼らない公助制度の構築を目指したものです。住宅確保要配慮者のみを入居条件とする賃貸物件に対し補助金や家賃補助を拠出する仕組みですが、2020年までの登録目標は大幅に未達の状況です。今回は本制度の成否は別として、住宅弱者への社会的な取り組みへの機運が高まっているなか、高齢者に注目して、課題と現状、対策を整理したいと思います。
日本に置ける高齢者の割合は年々高まっており、2019年現在28.4%と4人に1人以上が65歳以上となっております。賃貸住宅に関しても高齢者の需要が増えており、世帯数が減少するなかで、高齢者の存在を無視することはできません。しかしながら、高齢者の入居に関して断るオーナーはまだ少なくないと言われており、その為、住宅確保要配慮者とみなされています。
高齢者が入居を拒否される理由を下記にまとめました。
拒否する理由 | リスク | 対策 |
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収入が無い | 家賃不払い | 家賃保証会社加入により家賃不払リスクを転嫁 |
孤独死の可能性 | 孤独死した場合、心理的瑕疵などによる建物価値減 | 見守りサービスなどで早期発見を行う孤独死保険や孤独死見舞金などでリスクを補填 |
意思能力喪失の恐れ | 近隣への迷惑行為など | 親族や民生委員、ケースワーカーなどとの連携 |
身寄りが無い | 死亡を含めた事故時の後始末 | 一部の家賃保証会社は残置物撤去まで対応 |
上記のうち収入面は現在家賃保証会社の導入が進んできており、ほぼ問題ありません。孤独死に関する問題は見守りサービスという生活反応が一定期間無い場合に警告を出すシステムによりリスクの軽減を図れます。またこれまで定義が曖昧であった心理的瑕疵についても、国土交通省が取り組むべき課題であるとの認識を示していますので、なんらかの見解が数年内には出ると思われます。
また、孤独死に関して少額短期保険協会から、2018年の孤独死の実態についてレポートが出ています。
年齢 | ~29 | 30~39 | 40~49 | 50~59 | 60~69 | 70~79 | 80~ | 死亡時平均年齢 | 報告人数 |
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男性割合 | 3.2% | 5.8% | 11.0% | 19.7% | 32.9% | 21.3% | 6.2% | 60.8歳 | 1703人 |
女性割合 | 8.9% | 7.6% | 11.2% | 13.6% | 20.3% | 18.4% | 19.0% | 60.7歳 | 373人 |
※出典:一般社団法人日本少額短期保険協会
レポートに依ると老衰のイメージが強いいわゆる70歳以上の高齢者の割合は男性で27.5%、女性でも37.4%に過ぎず、孤独死は高齢者のみの問題ではないことがわかります。一方、法に則って故人の残置物を処分するためには膨大な時間と手間がかかる為、身寄りがないことの方が問題です。一部の家賃保証会社は身寄りがない場合も残置物撤去を行いますが、そもそも入居時に緊急連絡先がなければ保証会社の審査は通りません。高齢者を受け入れる体制は整いつつありますが、まだ対応しにくい事例は多いです。法的にも技術的にも少しずつ改善していますので、不動産プラザでは積極的に取り入れていきたいと思います。