月: 2022年9月
不動産の登記法をはじめ、各種権利関係の改正法が昨年成立しましたが、そのうち不動産の所有者に関する権利関係の改正がいよいよ来年4月に施行されます。その中でも相続土地国庫帰属制度が2023年4月27日施行となります。土地の所有権を放棄して、国庫の所属にすることができる制度です。
「山を持っているけど管理ができないから国に寄付できないだろうか?」
「田舎に土地があるけど、利用価値がないので国に寄付したい。」
という相談はよくありますが、本制度がこれらの悩みを解決してくれるのか、詳細を見ていきましょう。
【申請できる人】
相続によって取得した土地の所有者が国庫帰属を申請できます。売買・贈与で取得した場合はダメです。申請先は法務大臣ですので法務局が窓口となります。土地全体を所有していない場合でも、共有者と共同で申請が可能です。その場合共有者が相続以外で取得していても、問題ありません。
【申請できる土地の要件】
どんな土地でも相続土地国庫帰属制度が使えるわけではありません。国としては余計な管理コストを押し付けられることを避けるため、かなり厳しい条件をつけています。
却下要件(下記の要件に当てはまる場合は申請自体ができません。)
建物がある | 古屋等がある場合は解体する必要があります。 |
権利が設定されている | 抵当権や地上権などは抹消する必要があります。 |
他人の使用が予定されている | 通路やため池、境内地など他人との調整が必要なものはNGです。 |
特定有害物質に汚染されている | 鉛、ヒ素など土壌汚染対策法の基準以上に汚染されているとNGです。 |
境界未定又は争いがある | 境界が確定されてないものや、境界について争いがあればNGです。 |
不承認要件(下記の要件に一つでも当てはまる場合は審査不承認となります。)
管理に過大な労力が要る崖を含む | 崩落の恐れや、他者に被害をもたらす恐れがある崖、擁壁はNGです。 |
管理に過大な労力が要る地上物 | 通常の管理を阻害する車両、工作物、樹木がある場合 |
管理に過大な労力が要る埋設物 | 除去しなければ通常の管理をすることができない埋設物がある場合 |
隣接所有者と争いがある場合 | 屋根や樹木、構築物の越境がある場合 |
その他管理に過大な労力が要る | その他は政令で具体的に指定される予定です。 |
【費用はかかるのか?】
申請する際に申請の手数料(未定)及び、国庫帰属に際してその土地の10年分の管理料に相当する金額を負担金として納付する必要があります。寄付はできません。
負担金は参考としては、原野20万円、街中の60坪程度の宅地で80万円程度と示されています。
結論としては本制度を使える場合はかなり限定されますので悩みは解消されそうにありません。利用できるパターンとしては田舎で値段がつかない優良農地、土地だけでは買手がつかない古い団地内の土地などが考えられます。これから発令する施行規則や通達などでもう少し詳細が明らかになっていくでしょう。
以上