2020年度税制改正について

2020年度税制改正大綱が昨年12月20日に閣議決定されました。賃貸経営・不動産に関係するものを中心に主要な改正項目をまとめました。今後国会に提出後、3月に成立する予定です。ここ数年の印象としては節税対策として脚光を浴びてきた手法に対して、メスが入って行っており、増税が続いております。

創設された税制
海外の中古不動産の減価償却費の損益通算の改定
(2021年以降の海外の不動産所得について適用)
海外の中古不動産について簡便法により耐用年数を短く設定して減価償却費を計上し、事業所得や給与所得と合算して節税ができていましたが、簡便法を使う場合、家賃収入を超える減価償却費は計上できなくなります。増税です。なお、簡便法以外による減価償却費を計上する場合、その耐用年数が適切であることを示す一定の書類が必要となります。
低未利用地の活用促進
(2020年7月1日から2022年12月31日の譲渡まで適用)
保有期間5年超、上物を含めて譲渡価格 500 万円以下等の要件を満たす低未利用地(市区町村長の確認を受けたもの)の譲渡所得に 100 万円の特別控除を創設されます。減税となります。
所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応
(2020年4月1日以降の現所有者、2021年度以降の使用者に適用)
不動産の登記簿上の所有者が死亡し、相続登記がされるまでの間、現所有者(相続人等)に対し、市町村は条例で定めることにより、氏名・住所等必要な事項を申告させることができるようになります。不動産登記の義務化に向けた第一歩かと思います。一方で、調査を尽くしても不動産の所有者が一人も明らかとならない場合、事前に使用者に対して通知した上で、使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、固定資産税を課すことができるようになります。増税です。
既存制度の変更
住宅ローン減税の適用条件の見直し
(2020年4月1日以降に従前住宅の譲渡を行う場合)
買替えなどで、住宅ローン減税を利用した場合、従前の住宅を譲渡した際「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」「居住用財産の譲渡所得の特別控除」、その他買い替え特例などは原則利用できません。但し、取得後3年目に従前住宅を譲渡した場合に限って上記特例が併用できていたのが、今回の改正で利用できなくなります。増税です。
消費税の仕入税額控除制度の見直し
(2020年10月1日以降に仕入れを行った居住用賃貸建物に適用)
アパート等の賃貸用住宅を取得した場合は、住宅の家賃(非課税売上)に対応する仕入れに該当するため、その建物の取得に係る消費税については、本来仕入税額控除の適用を受けることができません。しかし、金地金などの売買(課税売上)を繰返し行うことにより課税売上を増加させ、課税売上割合を引き上げて課税業者となり、仕入れた建物に係る消費税について仕入税額控除の適用を受けるという節税手段がありましたが、本改正により、居住用賃貸建物の課税仕入れについて、仕入税額控除の適用を認められなくなります。増税です。
少額減価償却資産の一括償却特例の延長
(2022年3月31日まで延長)
中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、一事業年度当たり300万円まで取得価額の全額を損金に算入することができる特例の適用期限が2年延長されます。ただし、対象法人について、①連結法人が除外され、②常時使用する従業員の数の要件が500人以下に引き下げられます。対象法人が減るので基本的には増税となります。