2023年度、不動産関連税制の改正について

2023年度税制改正大綱が昨年12月23日に閣議決定されました。賃貸経営・不動産に関係するものを中心に主要な改正項目をまとめました。今年の目玉は相続税に関する贈与の扱いの変更です。増税が多いですが一方でインボイス制度や電子帳簿保存法などの手続き上の要件緩和が行われています。

新規制度】

極めて高い所得に対する課税強化(2025年以降の所得税)

所得税は原則累進課税で所得に比例して高くなりますが、配当所得や株式・不動産の譲渡所得は所得に限らず約15%と低い為、公平性を期すために、所得から3億3000万円を控除した後、税率22.5%で計算した金額を最低課税金額とする変更で、増税です。対象者は最低でも10億円以上の所得がある方となります。

防衛力強化にかかわる財源確保(2024年以降)

法人税額から500万円を控除後、税率4~4.5%の付加税が課されます。(増税
所得税は復興特別所得税が1%下がりますが、変わりに税率1%の新たな付加税が課されます。
たばこ税は3円/本の引き上げを段階的に実施されます。(増税

既存制度の変更・延長

相続時精算課税制度の見直し(2024年1月1日以降の贈与)

相続時精算課税制度に基礎控除(初年度及び毎年、年間110万円)の適用が可能となります。この基礎控除は暦年贈与の基礎控除とは別ですので、合わせて220万円まで控除できます。また贈与後に災害等で一定の被害を受けた場合、贈与時の時価から被害額を控除できるようになります。減税です。

相続開始前に贈与があった場合の相続税への加算期間の見直し(2024年1月1日以降の贈与)

相続前贈与の加算期間が3年から7年に延長されます。2027年1月1日以降の相続から順次延長となります。延長期間分の贈与については100万円の控除がありますが、増税です。

教育資金の一括贈与に関わる贈与税の非課税措置の延長(2023年4月1日~2026年3月31日)

制度が3年間延長されますが、贈与者が死亡した時に相続税課税価格が5億円を超える時は、拠出金の残額が相続財産へ加算されます。また契約終了時の残額の贈与税の計算は一般税率に統一されます。増税です。

結婚子育て資金の一括贈与に関わる贈与税の非課税措置の延長(2023年4月1日~2025年3月31日)

制度が2年間延長されますが、契約終了時の残額の贈与税の計算は一般税率に統一されます。増税です。

空き家に関わる譲渡所得の3000万円控除の延長(2024年1月1日~2027年12月31日)

従来の特別控除の要件に、譲渡後翌年2/15までに耐震工事・解体を行った場合も適用(減税)されるようになります。一方で本制度適用する相続人の数が3人以上の場合特別控除額は2000万円に減額されます。(増税

低未利用土地の譲渡の長期譲渡所得の100万円特別控除の延長(2023年1月1日~2026年12月31日)

譲渡対価の要件が500万円から800万円に引き上げられます。(減税)。一方で譲渡後の利用要件からコインパーキングは除外され、土地の所在も用途地域が設定されている場所に制限されます。(増税

インボイス制度の変更(2023年10月1日から制度開始)

免税業者が課税事業者を選択した場合、3年間は納税額が売上消費税の20%となります。(減税
課税売上高1億円以下の事業者は、6年間は1万円未満の課税仕入れはインボイス不要となります。(減税
1万円未満の値引き等についてはインボイスの交付が不要となります。(減税
10月1日からのインボイス登録の要件であった3月31日までの申請期限が実質廃止されます。

電子帳簿等保存制度の要件緩和(2024年1月1日以降)

売上高1000万円以下の業者に適用されていた電子データの保存に関しての検索機能確保の免除が、5000万円以下の業者にも適用されます。

電子データの出力書面を日付及び取引先ごとに整理すれば、電子データの検索機能確保が不要となります。 上記に対応できない業者への猶予として、税務署長が「相当の理由」を認めた場合、電子データを検索要件と改ざん防止措置等を満たさずに保存した上で紙出力保存との併用が許可されます。

以上